中小企業の経営戦略、業績評価は経営陣の感覚だけで決めるわけにはいきません。そのヒントとなるのが、バランススコアカード(BSC)です。バランススコアカードでは、4つの視点(財務・業務プロセス・顧客・学習と成長)から検討し、企業ビジョンを実現するための戦略を明確を明確にしていきます。また、財務優先ではなく、経営状況、品質も評価することでバランスの取れた業務を行うことも重要です。バランススコアカード(BSC)を経営に導入・活用することで、従業員各自が目標達成の業務を意識でき、企業の成長・組織を強化することが可能となります。
BSCとは、経営戦略の展開と管理のための手法です。1992年、キャプラン教授(ハーバード・ビジネススクール)とノートン氏(経営コンサルタント)が、従来の財務面だけの経営管理ではなく、非財務指標(顧客・業務プロセス・学習と成長)を取り入れた多面的経営管理手法として考案しました。
バランススコアカード(BSC)は1992年にアメリカで発表された経営管理手法ですが、現代でも十分に活用できます。しかし、具体的な例がないと分かりづらい、頭に入りにくいものです。
具体的なバランススコアカード(BSC)思考と呼ばれる四段展開の例を以下に挙げます。正しいベクトルで経営を実現させることがいかに重要かお分かりいただけるのではないでしょうか。経営は、合理的かつ効果的な手法が目標を達成させます。
■バラバラの思考で上から下に(もしくは下から上に)繋がっていない場合
財務・新商品の売上目標1億円
業務・既存のお客さんにチラシでも送ってみるか
顧客・ネットで宣伝すれば、それなりに売れるかも
人材・こんな物がうちのお客さんに売れるの?
⇒全く具体案が出されていない。社内が混乱する
■4つの視点で上から下に(もしくは下から上に)考えられている
財務・売上高1億円
業務・受注件数1万件
顧客・生産性5,000円/時間
人材・新しい教育制度の導入
⇒合理的な目標が立てられ、具体的に動くことで成長していける
バランススコアカード(BSC)は、難しい経営学ではありません。経営を4つの視点に整理して、論理的思考で考えることが活用する手法です。それでは、活用するコツを見ていきましょう。
当社では、経営手法の「バランススコアカード(BSC)」の導入・活用を目指す中小企業のコンサルティングをおこなっています。バランススコアカード(BSC)の導入事例と聞くと、空港会社、電力会社など大企業から大病院と言われる医療機関の名前を思い描く方が多いでしょう。しかし、上場企業だけのツールではありません。中小企業も積極的に導入し、ライバル企業と差を広げ成果を出されています。
導入した場合は、全ての経営陣の方々に課題に取り組んでいただくケースもありますが、社長お一人を相手にマンツーマン形式で行うこともあれば、次世代リーダー中心のチームと検討することもあります。クライアント様に合わせた形で有効性を実感いただいています。
そして、これまで導入した経験から、その企業に一番フィットした形で提案することが可能です。
例えば、「社長の考えがまとまっていない」、「社長の想いが社員に伝わっていない」、「社員全員一丸となり戦略を考えていきたい」ときなど、戦略を「見える化」(可視化)したいというケースには、「戦略アップ」を導入し、可視することで高い成果を期待できます。
一方、上記に不安がない場合は、バランススコアカード(BSC)よりも他のツール・手法での支援の方が成果を期待できることがあります。客観的な視点で企業様に合った経営管理手法を用いてコンサルティングを行っております。
バランススコアカード(BSC)では4つの視点で経営について考えていくことが基本です。
バランススコアカードの4つの視点では、財務の視線・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点という言葉が一般的ですが、当社では理解しやすいように、親しみやすいように、
(1)売上と利益…財務
(2)お客様…顧客
(3)仕事の仕方…業務プロセス
(4)人と組織…学習と成長
という言葉で置き換えて説明しています。
そして当社のアレンジで分かりやすく活用していただくことができます。
順に見ていきましょう。
(1)目標とする
・売上・利益はどのくらいを目指すのか?
(2)目標とする
売上・利益を獲得にするには、お客様にどうやって
・選ばれる理由を作り
・PRやリピーター作り
を行っていくのか?
(3)(4)
その為にはどのような
・仕事の仕方をして
・人と組織
を変えていくのか?
という形で(1)~(4)へ下りながら考え、そして実行は下から上へ実現させていくという流れです。
やり方は、ホワイトボードや模造紙など大きく書ける場所を使い、幹部社員など付箋紙を使って複数で意見を出し合いながら(1)~(4)を考えつつ、将来についての取り組みを「見える化」していくのです。
この4つの視点を基本に論理的思考を繰り返すことで、目標を実現するためのシナリオを作っていくことができます。論理的思考で共通認識ができ、競合よりも優れた戦略・仕事の仕方が生まれていきます。
戦略マップとは、企業の戦略の方向性を可視化できるツールです。ビジョンと目標を実現させるためのストーリーを作りあげることができます。目標を可視化することで、社員全員が各ポイントに目標達成のためのアイデアを落とし込み、共有するこが可能です。
経営者は戦略マップを把握することで、適切な意思決定や問題の早期発見が可能になっていきます。従業員としては、自分の仕事が目標達成のためにどう影響しているかが分かり、モチベーションアップにつながります。
当社では企業のご要望に応じて、戦略マップをご提案するかどうか判断していますが、あえてご提案しない場合があります。
例を挙げると、
社長の考えや戦略が
・ブレがない
・シンプルで明確
・社員に十分に伝わっている
この場合は、戦略マップの作成よりも「ガントチャート式年間計画」を使い、しっかりと戦略を実行に結びつけることがより重要です。
一方で、社長の考えや戦略が
・紆余曲折ある
・やや複雑になっている
・社員が十分に理解していない
場合が1つでもあると、戦略マップをご提案することもあります。
当社では、戦略マップをはじめとしたバランススコアカードだけではなく、多様な手法を用いた経営コンサルティングしております。企業様に合わせて最善の打ち手を見つけ出し、提案を行うことでより高い成果を目指します。
上記のように戦略を可視化でき、企業にフィットすれば、バランススコアカードを使った「戦略マップ」は、目標達成のために力強い味方になってくれます。しかし、書き方が難しいというイメージをお持ちかもしれません。
そこで、戦略マップ作成のポイントをご紹介していきます。
バランススコアカード関連の書籍の参考例を読むと、「売上拡大」、「コスト削減」から生まれる利益確保が1つの作成の方向性になっています。
当社ではそこからさらに分解します。
売上拡大のために
・選ばれる理由をつくる
・PRやリピーター作り
そして、
コスト削減のために
・仕組み・取り組み
・人材のレベルアップ
・コミュニケーション
・タイムマネジメント
という視点をお伝えしていきます。
そこで、例えば初めの視点である「選ばれる理由を作るために何をすべきか?」
などを検討してもらいます。
もちろん、上記の視点でなくても戦略マップは作成できます。視点があれば、検討しやすいという理由でご提示していますが、組織に合わせて作っていくことがベストです。
上記の方法は、戦略マップ作成で苦労されていらっしゃる企業にはオススメですので、参考にされてみてください。
作成することができれば、一目で会社の「戦略・目標実現までの道のり」が可視化され、全員が把握することができます。
また、バランススコアカードで「戦略マップ」を作成するには、ビジョン・目標だけではなく、「ゴール」を設定しなければなりません。最終目標である「ゴール」の実現のために作成するのです。ゴールがないとスポーツなどの競技もつまらなくなってしまいます。遊びもそうです。家族で温泉に行くのに、目的地がないと計画を立てようがありません。仕事もそうです。そして、ゴールを達成するためには、「重要成功要因」を明確にし、設定しなければなりません。
戦略マップを作成するコツとして、「掘り下げて考える」ことが大切です。
売上拡大というテーマを分解するときには、
・選ばれる理由をつくる
・PRやリピーター作り
の視点で考えてくと
「何をすべきか?」が生まれてきます。
「どんなお客様に」、「どのような理由で」、「他社ではなく自社を選んでもらいたいのか?」
を考えていくわけです
もちろん、戦略マップを使わなくても考えることだけならできます。
しかし、「そのためにどんな仕事をする?」
そして、「そのためにどんな人材育成をする?」
と掘り下げて、考えていくことに戦略マップの視点の重要性があるのです。
KPI(Key Performance Indicators)とは、「重要業績評価指標」と呼ばれるものです。
業績評価のための指標の設定が必要になってきます。戦略目標や重要成功要因をどう評価するのか決めることがKPIです。
しかし、KPI(業績評価指標)の達成だけが目的にならないようにしなければなりません。
当社では、中小企業でのKPIの設定は必要最低限に絞って、そこから増やすことをおすすめしています。
そして、
・行動目標
・成果目標
を意識して設定することです。
例えば、
営業のKPIを設定するときに
「毎週5件見積もりを出す」というものは、「行動目標」です。その行動によって成果がもたらされます
「毎週1件受注する」というものは、「成果目標」です。
このように、行動目標ばかりでも、成果が見えません。成果目標ばかりでも、行動が見えません。
この考え方を念頭に置いて、KPIを設定するとバランスがよい目標設定になります。非効率的にならないように、バランスを考え、早期にKPIの最適化を行うことが重要です。
バランススコアカードは、有用性のある経営ツールとして広く認知され、導入する企業が増えてきています。
しかし、会社によっては、思ったよりも「改善できなかった」などの失敗事例があります。
バランススコアカード(BSC)のシステムを導入すれば、現場レベルでうまくいくだろうという経営者の考えや、そもそもコンサルタントが提案や方法を間違って伝えていては成功するものも成功しないでしょう。
バランススコアカードの導入が向いている企業は、
・これからの戦略を見直したい
・明確でない戦略を固めたい
・社員と一緒に戦力やビジョンを共有したい、視える化したい
・社員の戦略策定力を上げたい
という企業には特におすすめです。
理由は、バランススコアカードの戦略マップを使って、これからどうしていくことが成功につながっていくのかを改めて考えることができるからです。
一方、すでに「明確な戦略が決まっている」、「ビジョンが明確である」企業には、
・ガントチャートによるアクションプラン策定
・スコアカードによる目標管理
がより実用的だと言えます。
経営幹部育成においては、経営者の目線に一歩近づくためにバランススコアカードを活用し、会社や所属部門の戦略を視える化しつつ、アクションプランや目標設定を行っていきます。
また、バランススコアカード(BSC)は組織に変化を促していくツールです。経営者も改革の覚悟が必要なものです。そして、財務などの目標達成ばかりに目を向けるのではなく、顧客側の視点も重要です。顧客満足をないがしろにし、ただ単純に何件訪問、商談何件、成約何件だけでは、顧客視点に立ったとは言えません。
創業時は、前職で経験した「バランススコアカード」を主力の経営コンサルタントとして展開することを考えていました。
しかし、中小企業の創業、経営革新、再生の現場を見てきて、バランススコアカード(BSC)よりも、組織によっては、もっといい経営手法があるということが分かってきました。
「この企業にはバランススコアカードが向いているな」、「あの企業には別のコンサルティングメニューがいいな」とさまざまな手法やツールを用いて、こだわらない最善手を提案するように心がけています。
・経営者の考え
・経営戦略
・社風
・社員の受け入れ体制
などなど、さまざまな要因から総合的に判断し、多面的な視点から提案を行っています。
バランススコアカードは1つの経営ツールとして、
・道具ありきで考えない
・道具に振り回されない
ことが大切です。
もちろん、バランススコアカードに限らずSWOT分析や中期経営計画など他の経営ツールでも同様のことが言えるでしょう。以下のコラムでは、経営戦略策定の前で使用されるSWOT分析の限界と、「強み」に関する当社の考え方をまとめています。
また私の経験も踏まえた、バランススコアカード(BSC)が使いにくい理由と解決策などをまとめています。あわせて、上記のコラムで照会したガントチャート式年間計画についてのコラムもご興味がある方はご一読ください。
●中小企業にとってのバランススコアカード(BSC)のメリットでありデメリットとは(1)~戦略マップのシンプルさ~
●中小企業にとってのバランススコアカード(BSC)のメリットでありデメリットとは(2)~戦略マップの論理性~
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仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。