経営において目標を持つ大切さは、どこかで聞いたことがある話かと思います。その目標設定には、「山登り型」「波乗り型」の2つのタイプに分けられます。山登り型は、目標を明確に描き、それを実現させる詳細な計画を元に、行動や習慣を繰り返し、着実に行動し理想を追求するタイプです。
一方で、波乗り型はプロセスを細かく決めず、大きな方向性だけを定めて、人との出会いや機会・自分の直観を元に臨機応変に行動し理想を追求していくタイプです。
※山登り型・波乗り型について詳しくお知りになりたい方は、『人生を決める「成長スイッチ」をONにする!』(古川武士著)をご一読ください。
経営計画の多くは、実は山登り型の考え方であり、将来どうなりたいかを考えて、逆算して1年目・2年目などの単年度の計画を考えていきます。セミナー等の参加者の方に「山登り型、波乗り型のどちらの考え方が、自分が好きか?」という質問に手を挙げて頂くと、多くの方が「波乗り型」に手を挙げられます。山登り型の経営計画というのは、波乗り型の方に納得感がないのかも知れません。そうは言いながらも、経営者や後継者、そして経営幹部になられる方は、自身が波乗り型だとしても、山登り型の経営計画にも意識を向ける必要があると考えます。
逆算で経営を考える重要性は、松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助も次のように述べています。
(東洋経済ONLINEより:https://toyokeizai.net/articles/-/155152?page=2)
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経営を進めていくのに、経営者はいつも将来というものが頭の中にないといかんね。5年後には、どうなるか、あるいは10年後には、どうなるか、さらに、こうしたい、ああしたいというものがないとな。そして、そのうえで、今どうしたらいいのかを考える。将来から現在を考える。こういう発想が「経営者としての発想」というもんや。
将来のことを考えれば、これは、今やらんといかん、あれもやらんといかんということになるわね。そういうことになれば、それをやると。断固、実行すると。けど、どれも簡単にやれるものばかりであればええけどな、実行するのが非常に困難であると。なかなかできませんというものもある。しかし、できませんからやりません、というようなことを言っておったら、その目標を実現することはできんな。
なんとしても目標を実現したいと願うならば、そのできんことでも、なんとかできるように考える。できんけど、できるようにするためには、どうしたらいいのかを考える。そして、断固やると。それを解決する知恵を出し、努力をせんといかんわけやな。
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この語り口で、逆算で経営を考えることがすべて詰まっていますが、今一度、「逆算で経営を考える3つのポイント」をお伝えしたいと思います。
松下幸之助の言葉にもあったように、5年後、10年後のことを考えて、将来から逆算して現在を考えることが重要です。
例えば、5年後どういう会社・お店になっていたいのか?をまず考えていくのです。売上をどのくらいに伸ばしたいのか?など自分の会社の将来を考えていきます。その時に、このくらいの売上なら、そのときの社員数は?店舗数は?など一つの将来をきっかけに将来像を膨らませていきます。一方で、会社のビジョンだとモチベーションがあまり沸かないという経営者も中にはいらっしゃいます。その時には個人の夢を考えてみるものも一案です。個人の夢は様々です。何かを持ちたい(家・車・名声)という夢だったり、何をしたい(旅行・趣味)という夢だったりと様々です。自分が本当にワクワクする個人の夢を考え出し、それを実現していくためには会社のビジョンと紐付けることも一案です。
逆算で経営を考える方法として、利益から考える方法があります。
(1)最終利益をどれだけ残したいのかをまず考えていきます。その利益の計算方法も、銀行からの借り入れの返済、今後の投資などを踏まえながらどのくらいの利益が必要かを考えていきます。
(2)会社の固定費を計算する。固定費は売上に関係なく、企業やお店が支払う経費。人件費や家賃などが固定費に該当します。
(3)(1)の最終利益・(2)の固定費の合計が必要な粗利
(4)必要な粗利を獲得するために、どのように売上を確保するかをマージンミックスの視点で考えていきます。
(3)から(4)の時に、過去の平均粗利率などで必要売上を出すと、現実離れした売上になる事があり、逆算した段階で経営者のやる気が削がれることがあります。平均粗利率は過去の実績にしか過ぎません。それを現実的にしていくには、マージンミックスの視点で考えていきます。マージンミックスのマージンは利益、ミックスは組み合わせです。
そこで目標粗利額を、どんな組み合わせで満たしていくかを考えるのです。例えば、商品によっても粗利が高い商品(A)もあれば、粗利が低い商品(B)もあります。そこで、商品Aを毎月何個売るのか?商品Bを毎月何個売るのか?の組み合わせを考えていくのです。
しかし、この商品別売上計画・利益計画だけでは絵に描いた餅になる可能性もあります。そこで別の視点で、マージンミックスの組み合わせを考えていきます。例えば、販売先別の売上・月別の売上などを考えてみて、必要粗利額が出るのかをダブルで検証していくのです。その検討過程で、具体的な取り組みを考えていくのです。それが会社・お店の戦略になっていきます。粗利が大きい商品Cを販売していこう。売上が凹む時期に最低限の粗利を稼ぐためのキャンペーンをしようなどです。
まとめると、目標粗利をどう稼ぐかを逆算経営では、考えていくことが重要なのです!
逆算で経営を考えることについて、ビジョンと数字から考えることをお伝えしました。ビジョンも数字も目標です。その目標を達成するためには行動が必要です。そこで当社でオススメしているのが、ガントチャート式経営計画。目標である、ゴールから逆算で考えていくとやるべき事がすっきりしてきます。
「売上1億円突破するために何をするか?」
そして
「そのため、何をするか?」
というように、そのゴールに到達するには何をしていくかということを問いながらガントチャート経営計画を作成していきます。
そして出来た計画をみて、逆算ではなく順算で検証していく。
「△△したらどうなるか?」
「そして次に○○したらどうなるか?」
その検証ができたら、着実に実行していくのです。
このガントチャートは通常、Excelや専用ソフトを使って作成します。しかし、当社では、中小企業や小さな会社・お店がガントチャートを使いやすいように、紙とペン、そして付箋を使って作成していきます。以下がそのイメージです。
このようにガントチャート式経営計画のよいところは、達成したい目標に向かって、何をすべきかを
・逆算して考える
・分解して考える
・優先順位をつけて考える
・一覧にして考える
というところにあります。
頭の中で考えていては
・ぼやっとして具体的にならない
・したいと思っても忘れてしまう
・自分の頭で思っているだけで、スタッフと共有できていない
ことがあります。
これまで、経営は逆算で考えるという3つの視点をお伝えてきました。波乗り型の経営者にとっては、逆算で考えることが不得意かも知れません。しかしながら、波乗り型が不正解というわけではなく、これまで多くの経営者を支援してきた経験、自分自身の経験から、山登り型・波乗り型を両方とも組み合わせた方がよいのが実感です。
それは、やるべき事にじっくりと取り組む一方で、目まぐるしく世の中が変化する中で、時には計画にこだわらず臨機応変に動くことも重要だからです。自社がいま、山登り型・波乗り型どちらを優先して行動するかということを意識し行動することが、メリハリの利いた経営になるのです。
「逆算で経営を考えるポイント その3」にご紹介した、このふせんを使った、ガントチャート式経営計画について知りたい方は、「まんがでわかる!かんたん!ガントチャート式経営計画の作り方」電子書籍(Kindle)を発売しました!詳しくは画像をクリックしてください。
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・いつも仕事が時間通りに終わらないので残業や休日出勤が多い
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・仕事の段取りを組んだり、計画を立てるのが苦手
・上司や取引先から「何を言いたいのかわからない」とよく言われる
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など、 本書はこのような仕事の「できない」をなんとか解消したいと日頃からお悩みの若手ビジネスパーソンの皆さま、そしてそうした部下をお持ちの管理職の皆さまへの処方箋です。
仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。