中小企業の経営計画の作り方・立て方の書籍のセミナーやコンサルティングで、必ず出てくるのがPDCA。
経営計画策定は、PDCAサイクルでいうところのP(Plan:計画)の段階です。
そして計画策定をきっかけに、D(Do:実行)、C(Check:確認)、A(Action:検証)をおこないます。
なお、PDCAのA(Action:検証)について、鬼速PDCA(冨田 和成 著)によればAdjust:調整としており、調整の方がしっくりくる方もいらっしゃるかも知れません。
すなわち、次に向けた行動を調整し、その結果を踏まえて、新たな計画を策定するP(Plan:計画)に入り、新たなPDCAサイクルを回していくのです。
しかし、PDCAサイクルは言うは易く行うは難しで、多くの中小企業ではこのPDCAが回っていない、回せていないのが実態です。では、中小企業でPDCAを回らない理由はどこにあるのでしょうか?
PDCAサイクルの各段階でその理由を説明するとともに、PDCAの回し方などをコツも含めてお伝えしたいと思います。
まずは、「P」Plan:計画段階における、PDCAが回らない理由です。
1 計画・目標を忘れる
セミナーやコンサルティングなどで、経営計画や目標を憶えていますか?とお伺いすると「何だっけな~憶えていない・・・」と苦い顔をされる経営者の方が多いのが事実です。経営計画を策定した後、日々の業務に戻ってしまったら、目の前のことでバタバタして、経営計画が頭の中から無くなってしまう経営者も多いのです。人間は弱い生き物で自分が立てた目標・計画すら忘れてしまうのです。PDCAサイクルにおいて、計画を作っても実行せずに忘れて、また時期を置いて別の計画を作るということは、よくある話です。
そこで、目標・計画を忘れない仕組みをつくることが重要になります。それには、自分の力で忘れない仕組みをつくったり、他人の力を借りて忘れない仕組みをつくる2つがあるのです。「自分は怠けるなぁ~忘れてしまうなぁ」と思っていらっしゃる経営者は他人の力を借りて目標・計画を忘れないようにしています。経営者の皆さんはどちら派でしょうか?
2 目的・目標が不明確・達成できそうにない
経営計画の中には、目的・目標が不明確だったり・達成できそうにないものも多く見受けられます。目的とは、「何のために」するのか?目標とは、「何をどこまで・いくらまで」ということを考えられているかどうかです。それは、作成した経営者だけでなく、社員・スタッフの納得感にも関係します。社員・スタッフにとっては、「何のために」「どこまで・いくらまで」というところが無ければ、頑張る理由を見出せません。そこで改めて、目的・目標がしっかり考えられているか、書き込まれているかを考える必要があります。PDCAサイクルにおいて、最初のPでつまづきやすいケースです。目的・目標が具体的でないと、社員・スタッフからは何をどう達成してよいのか分からないこともあります。
そこで、目標の設定には、「SMART(スマート)の法則」が有効です。
「SMART」とは、
①Specific 具体的な
②Measurable 測定可能な
③Achievable 達成可能な
④Related 経営目標に関連した
⑤Time-bound 時間制約がある
の頭文字を取ったものです。
例えば、「販売から○ヶ月後までに、売上○○○円を超える20代女性向け商品を6ヶ月で開発する」という目標設定になります。特に③の達成可能なについては、目標も達成できそうに無ければ、経営者自身そして社員もやる気が無くなってしまいます。
そして、その目標を達成していくために、行動を具体化していくのです(次の項に詳しく書いてあります)。
3 実行できる経営計画になっていない
過去に経営計画を作ったけれども、経営計画を作り直したいというご相談を頂くことがあります。その理由は、作ったけれども実行できていないというものです。作成された経営計画を拝見すると、残念ながら実行できる計画になっていませんでした。
経営計画には決まったものがありません。ただし、よくある経営計画の傾向として、(1)数値計画中心の計画、 (2)方針やスローガン中心の計画、(3)過去~現在の分析中心の計画、というものが多く見受けられます。
このような計画だと、「どんなことに頑張ってよいのか」社員も、そして作成した経営者自身も分からないことさえあります。だからこそ、PDCAサイクルを回すためには行動できる計画にすることが重要なのです。行動できるとは「その計画を見て行動がイメージできる」ものです。イメージできないものは行動できません。例えば、顧客満足の追求と経営計画に記載されていても何をしていいのか分からない状態です。
だから、行動を具体化することが重要なのです。その行動には2種類あります。
それは、
(1)毎日継続的におこなう行動(場合によってはレベルアップもあり)
(2)複数の行動を組み合わせた活動
です。
(1)は、整理整頓や清掃などが毎日継続的に実行するものです。
(2)に、当社がオススメしているガントチャート式経営計画のように、ゴールに向かって逆算で行動を考え積み上げていくものです。
(1)(2)ともに、行動が具体的でなければ、行動に起こすことはできません。
そこには、数値化したり、担当者を決めたり、対象範囲を絞ったり、ゴールを決めたりなどの行動の具体化の工夫が必要です。
実は、多くの経営計画では「行動が具体的になっていない」ものが多く、そのため経営計画が活用されない、経営計画においてPDCAが回らない一番の理由だと考えています。
次は「D」Do:実行段階で、PDCAが回らない理由です。
4 日々の行動に落とし込まれていない
「3 実行できる経営計画になっていない」でお伝えしたとおり、(1)数値計画中心の計画、 (2)方針やスローガン中心の計画、(3)過去~現在の分析中心の計画の場合、頭では理解しているものの、日々の活動(毎日・週間・月間)にどう落とし込んでよいのか分からないことがあります。そこで、毎日の忙しさによって、経営計画そのものを忘れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。PDCAサイクルを回していく際には、今日・今週・来週何をすれば、目標が達成されるかという日々の行動に落とし込むことが重要なのです。
ガントチャート式経営計画を使えば、行動が具体的になっているので、それを見て行動もできますし、一方で、ガントチャート式経営計画を定期的に見て、日々のTODOリストや週間・月間スケジュール帳へ転記し、日々の行動に落とし込むことができます。
5 腹落ち感がなく、抵抗感をもつ社員がいる
社員が多い中小企業では、時には経営計画に対して腹落ち感(納得感)がなく、抵抗感をもつ社員がいることがあります。その要因はさまざまですが、その一つの理由として、現状を維持する方が楽だからということもあります。実はこのことは経営者自身も同じです。現状維持が楽、失敗したくないという気持ちが強いほど、経営計画を作っても実行に移せません。PDCAを回すことにおいて、「何をするか」だけでなく、「誰が」「どういう思い・モチベーション」で実行するかということも重要になります。
「2 目的と目標が不明確」で述べたとおり、その経営計画を実行し目標を達成するための目的や自社の背景などを社員および経営者自ら腹落ちする取り組みも実行に当たっては重要なことなのです。そこで、そしてその背景などを社員が理解してもらう、密なコミュニケーションは重要です。
最後の、「C」Check:確認段階、「A」Action:検証・調整段階、PDCAが回らない理由を一緒にお伝えします。
6 振り返る時間・仕組みが無い
経営者と話をすると、「忙しくて経営計画を実行する時間が無い、経営計画を見る時間がない」といった時間に関するお悩みをお伺いすることがあります。その一方で、多くの経営者は、訪問依頼や来客があれば対応する、電話やメールにすぐに反応して、そちらを優先するという状況はよくあると思います。そこで振り返るために、自分の時間を予約することを重要です。経営者の多くが、他人とのスケジュールを埋めることはありますが、自分から自分のためのスケジュールを埋めることはあまりないようです。その経営者には、自分のための時間に限っては、来客・電話を極力控え、経営計画の振り返りをおこない、見直しをおこなう時間を確保することが重要なのです。
また、一方で、計画ができたかどうかを振り返る仕組みがないこともあります。
そもそも経営計画における振り返りとは、
・売上・利益・経費などの数値の実績が計画と比べてどうか?
・行動の実績が計画と比べてどうか?
を確認して、次の打ち手を考えることです。計画段階でも関連しますが、計画を振り返られるように作っていないと、「何を」「いつ」「どのように」振り返っていいのか分かりません。数値計画と実績を見ながら、次の打ち手を考えることがよくありますが、その打ち手もぼやっとしていては行動に移せません。当社でオススメしているガントチャート式経営計画では、数値計画の計画と連動して行動計画をしっかり立てていくので、毎週・毎月の行動が明確になり実行できたかどうかの振り返りもおこないやすいのです。
この振り返りについても、「1 計画・目標を忘れる」でお伝えしたとおり、人は忘れる生き物ですから、自分の力で忘れない仕組みをつくったり、他人の力を借りて忘れない仕組みをつくることが重要なのです。PDCAサイクルにおいて、Checkせずに、Doばかりをするケースも見られ、改めて振り返る仕組み・仕掛けを考え、時間を確保することが重要です。
7 ネガティブな気持ちで「C」Check:確認、「A」Action:検証をおこなっている
「C」Check:確認、「A」Action:検証は、「達成・実行できたこと」「達成・実行できなかった」ことを確認し、検証します。この作業をやっていると、時には達成・実行できなかった人の「犯人捜し」になったり、時には、できなかった自分への自己嫌悪になってしまうことがあります。そこで、「なぜできなかったのか?」というマイナスの気持ちを切り替えて、「どうしたらできるのか?」というプラスの気持ちに切り替えることが重要です。すべてが計画通りに進まないこともありますし、飛び込みで仕事が入ってくることがあります。そういったイレギュラーな要因も考えながら、PDCAサイクルを回す際に「どうやったらできるのか?」をガントチャート式経営計画を使って考えていくのです。
8 計画・実行することは、「仮説・検証のサイクルを回す」ことであるという意識が薄い
計画して実行して成功する。これが理想のサイクルですが、必ずしも思った通りになるわけではありません。時には失敗することもあります。計画はあくまで仮説です。仮説とは「たぶん、こうすれば上手くいくだろう」という、仮の考えです。それを実行して、上手くいったか、上手くいかなかったのかを検証するのです。実行して上手くいかなかった場合は、計画がおかしかったということで、どうやったら成果が出せるか?という視点でもう一度、計画、すなわち仮説を考えていくのです。
だから、計画しても上手くいかないのというのは、自分たちの仮説が間違っていたということであり、もう一度仮説を考え直し、着々と実行しPDCAサイクルを回していくのです。
以上、中小企業でPDCAが回らない理由とともに、PDCAサイクルを回すコツについてもお伝えしてまいりました。特に経営計画の行動が具体的になっていないという点について、ガントチャート式経営計画をご紹介しました。
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