経営コンサルティングをしている中で、経営者から「経営計画書や事業計画書は必要なの?大手企業でしか役に立たないのではないの?」というお問い合わせやご相談を頂きます。
そのお問い合わせやご相談の背景には、これまで経営計画書がなくても、経営をやってきたという経験と自負があるため、その必要性について疑問を持たれていらっしゃるのかも知れません。
また一方で、過去に経営計画書を作成したものの、結果として、実現できていないから、作ってもムダだ、役に立たないという印象を持っていらっしゃるのかも知れません。
本コラムでは、
などについて、これまでのコンサルティング経験を踏まえてお伝えしたいと思います。
冒頭、「企業経営において経営計画書が必要である」と思わない経営者の例をお伝えしましたが、実際には経営計画書が必要としている経営者もいらっしゃいます。それは外部、内部、経営者の3つのパターンに分かれます。これからそれぞれのパターンについて、説明します。
外部に経営計画書を提出する場合は、外部に何からの支援を求めるときです。分かりやすい例とすれば、銀行から資金を調達したいというケースや補助金などの採択を受けたいというケースであったり、外部の会社などに自社の経営により深い参画を依頼するなどケースが考えられます。
その時には自社の経営計画書および事業計画における主な骨子は「自社が将来、どのような方向性で、どのような姿になることを目指しているのか?」「その姿を目指す際に、○○が足りないから、支援して欲しい、協力して欲しい」というものです。
この場合は、自社が目指す姿が魅力的かつ実現可能性があることを伝える事が重要であり、特に資金調達などの場合は、自社が目指す姿を数値にしなければ、金融機関には伝わらず、数値が主体の計画となります。
更には、経営改善計画書の場合は、その方向性・目指す姿に至った経緯を示すために現状分析などの検証結果を示すこともあります。
クライアント企業内で社員の方と会話していると、会社の方向性が分からないという社員の声を聞くことがあります。
そこで、社員など内部向けた経営計画書は、社員の気持ちを一つにしていくための経営理念の明確化、方向性や目指すべき姿の提示、および目指す姿に向けた各部署・各人が行うべきことが中心になります。
経営理念の明確化、方向性や目指すべき姿の提示においては、スローガンや方針の抽象的な表現にとどまるケースもあれば、会社にとって重要な数値、すなわちKPI(重要業績評価指標)など設定して各部署の目標設定とすることもあります。
ただし、外部向けの経営計画書と比べて、数値も財務に偏ったものではなく、営業・製造など実務の現場で分かりやすい目標設定となります(例:受注件数、不良率、稼働率)。
経営者にとっての経営計画書とは、自分自身の羅針盤とも呼べるものです。「自分の会社がどうありたいのか?」を考えながら、会社の発展・成長・進化のために、「やるべき事」「やりたい事」を明確にしながら、整理していくのです。経営者によっては、頭の中で常に考えている方もいらっしゃるかも知れません。
書類としてまとめていくメリットは、作成時における「検討漏れ」「整合性の検証」、作成後の「忘却」「記憶違い」「進捗管理」を防ぐことができるということです。
これらがベースとなって、金融機関に向けた外部、社員など内部に向けた経営計画書となっていきます。
では、経営計画書が不要な経営者やその時期とはどのようなものでしょうか?
経営計画書が必要ない状況でのポジティブな場合だと
ということが考えられます。
経営計画書として形はないものの、外部・内部・経営者自身目指す姿がある程度明確になっているというものです。
一方、経営計画書が必要ない状況でのネガティブな面だと
ということが考えられます。
経営コンサルティングをしている中で、ほぼ同じことを日々繰り返している中小企業が意外にも多いように感じています。
やっていることは同じだから経営計画書は不要というものです。もしくは、何かしようと思っていても、日常業務が忙しいから、何も手つかずとなっているのです。
中小企業が目指すべき姿に向けて、取り組むべき行動には2つあります。
1つは、同じ行動を「繰り返す」ことです。
例えば、
・毎日、清掃活動すること
・月1回、営業会議を開催すること
など、決めたことを継続する活動です。
まさに、継続は力なりです。
また、継続して行動する活動の中には「なんでもないような当たり前のことを徹底的に行うこと」もあります。これは、凡事徹底(ぼんじてってい)です。
もう一つは、目標達成に向けて逆算して行動を「積み上げる」ことがあります。
例えば、原価低減というテーマについて
・現状を分析する
・原価低減のアイデアを出す
・実行策を評価する
・実行策を実行する
など、いろいろな行動を積み上げて成果を出す必要があります。
このように中小企業の行動には、
(1)同じ行動を「繰り返す」こと
(2)行動を「積み上げる」こと
どちらか片方もしくは両方ないと達成できません。
経営計画書や事業計画書がない会社の多くは、「繰り返し」の行動はあっても、「積み上げ」の行動がないことが多いのです。
誰しも、思ったことしか実現しないものです。もちろん、思ったことがすべて実現するとは限りませんが、思うことが実現の第一歩です。
経営計画書は思うことのきっかけとなるのです。
そこで当社の経営コンサルティングにおいては、経営計画書の策定において積み上げの「行動」をより意識したものと考えています。
経営計画書は、企業の状況・目的によってフォーマットは異なります。当社では外部、内部、経営者向けのそれぞれのパターンの経営計画書を用意しております。
またその企業にあったオリジナルの様式を作成する事もあります。作成の中でお伝えするのが、経営計画書の様式を単に埋めようとするだけではもったいないとお伝えしています。それには3つの段階があります。
(1)まずは様式の空欄を埋める
※初めて作成する場合は埋めるだけで精一杯かも知れません。
(2)次に様式の空欄を埋める事で気づきや発見があること
(3)そして、気づきや発見から新たな取り組みアイデア・行動が生まれる事が重要です。
すなわち、経営計画書の「計画」なので、数値計画だけでなく、それを達成するための行動が生まれないと、経営計画書の意味がなくなります。
経営計画書には、過去を紐解く分析もおこないますが、分析して次の行動が生まれないと分析の意味がありません。
作成しながら、これを次のアクションに移すにはどうすべきかを考える事が重要なのです。
経営者によっては3年先・5年先に思いをめぐらすことができる経営者もいれば、業種的に、また自身の考え方として1~2年ぐらいが精一杯という経営者もいらっしゃいます。長期のビジョンだろうが短期のビジョンだろうがまずは一定のゴール(到達点)を考える事。それが数値計画(詳細・概要)でも、商品開発のような数値以外の面でも構いません。
まずは来年の今、もしくは再来年の今どうありたいかを考える事が重要です。そして、その為に何をなすべきかという、積み上げ行動が重要になります。
当社ではガントチャート式経営計画を用いて、行動を具体化しています。
中小企業の経営計画書として、当社ではガントチャート式経営計画を中心に考えています。数値計画であろうと、各部署の取り組みであろうとそれにはゴールがあり、ゴールに向かうための行動があります。
ガントチャート式経営計画のよいところは、達成したい目標に向かって、何をすべきかを
・逆算して考える
・分解して考える
・優先順位をつけて考える
・一覧にして考える
というところにあります。
頭の中で考えていては
・ぼやっとして具体的にならない
・したいと思っても忘れてしまう
・自分の頭で思っているだけで、スタッフと共有できていない
ことがあります。
ガントチャートの作成はExcelや専用ソフトで作成することが一般的ですが、当社では、作成・変更が短時間で済むように、付箋を使ったガントチャートを中小企業の経営計画書・事業計画書としてご提案しております。
このふせんを使った、ガントチャート式経営計画について知りたい方は、「まんがでわかる!かんたん!ガントチャート式経営計画の作り方」電子書籍(Kindle)を発売しました!詳しくは画像をクリックしてください。
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