事業承継は、どの会社にとっても避けては通れません。そして、事業承継は会社の存亡に関わるほど重要なことです。当社は、主要業務として、事業承継コンサルティングをおこなっており、家業から企業に向けた組織力強化を目的に、後継者と後継者を支える経営幹部を対象にしたコンサルティングをおこなっております。
最近、当社で行った、これまでの事業承継コンサルティングの実績を紐解く機会があり、改めて事業承継コンサルティングは、ワンパターンでないことを実感したところです。そこで、事業承継コンサルティングについて感じた事をお伝えしていきたいと思います。
当社では以下の視点をもちつつ、事業承継コンサルティングの方針を設定しております。
1 攻め
2 守り
3 財務
4 後継者の得意・不得意・やる気
5 渡す人と受ける人との人間関係
これから、これらの5つの視点について、事業承継コンサルティングを通じて感じた事をお伝えします。
まずは、事業承継コンサルティングにおける視点の一つ目である「攻め」についてです。
事業承継を考える前提として、まずその会社のビジネスモデルの優位性を確認しています。
それは、 ご支援する企業の売上・利益が安定・成長傾向にあるかという視点で企業を確認します。
強固なビジネスモデルを構築している企業の場合であれば、あまり「攻め」の視点は意識せずに、「守り」などその他の点から支援を行っています。一方で、ビジネスモデルが崩れつつあり、売上・利益が下降傾向にあり、経営者および後継者が売上確保に苦労している場合などは、「攻め」の視点から考え直していきます。
「攻め」の視点ではまず、会社や商品がお客さまから選ばれる理由づくりが必要です。お客様に選ばれない限りは、売上は上がりません。
これまで長い業歴を支えてきたからには「選ばれる理由」があります。しかし、その選ばれる理由だけで、今後もお客様が選び続けるとは限りません。
そこで、経営者だけでなく後継者を交えてお客様に選ばれる理由を再構築していく必要があります。
他社ではなく自社を選んでもらうということを突き詰めて考えます。
・どんなお客様からどのような理由で選ばれていきたいのか?
そして、
・どのようにお客様に自社について知ってもらい、リピーターになってもらうか?
などを一緒になって検討します。
こういったことを後継者にも積極的に考えてもらうことで、後継者の経営者マインドの醸成を図っていくのです。
事業承継コンサルティングにおける視点の「守り」について、解説します。
事業承継コンサルティングにおける「守り」とは、チーム力を発揮することです。
チーム力とは、人材×仕組み×人間関係での組み合わせで発揮されます。
・人材とは、社員の能力やスキルに関わります。
・仕組みとは、会社の制度・ルールのことです。
・人間関係とは、チームのメンバーが同じビジョンを向いていて、良好な人間関係を維持していることです。
これらが上手くいかないと、せっかく攻めで売上が上がっても、利益が取れなかったり、ロスが発生したりします。
例えば、先代の経営者の時には、そのカリスマ性・リーダーシップによって上記の人材、仕組み、人間関係のバランスがうまく保たれていることがあります。
しかし、後継者になると当然、経営者が変わるわけですから、今までうまくいっていたバランスが崩れてしまうのです。
だからこそ、経営者のカリスマ性に頼らず、社員の力を存分に出していきたいと考える後継者が多いのです。
そこで、コンサルティングに入らせて頂き、この「守り」を固めるお手伝いをさせていただいています。
「守り」を固めるということは、
・人材:自ら考えて動く人材育成
・仕組み:仕事がしやすくなる仕組み作り
・人間関係:ビジョンに共感する人間関係
などの 目標にして、社内的な取り組みを推進するコンサルティングをおこなっています。
それでは、「財務」を含めた、ここまでのまとめです。
事業継承において、株式をはじめとして財産承継を含めた財務の細かい点については、公認会計士・税理士に依頼しております。
なお、この「財務」については、財産承継が中心になっています。この財産承継だけでは事業承継は十分とは言い難いです。というのも、財務体質が良好かどうかで残りの4つのコンサルティングの内容が変わることが当たり前のようにあるからです。それぞれの項目が独立しているのではなく、相互に複雑に絡み合い、またご依頼先の意向も踏まえてコンサルティング内容が変わってくるのです。
この「財務」においては、後継者の視点に立つと、本当に後を継ぎたいと思えるような財務状況であるかどうかについて当社でも確認しています。後を継ぎたいと思えるような財務状況かどうかは、当然、後継者の判断によるものですが、財務状況というのは、これまでの「攻め」と「守り」の結果によるものだと考えています。
「攻め」とは、当社がお客様に選ばれている理由づくりでした。
「守り」とは、チーム力発揮で人材×仕組み×人間関係のそれぞれをレベルアップして、利益を確保するということでした。
この「攻め」と「守り」が、現時点で弱くなっていれば、今の財務状況が盤石でも、事業継承をした後に、厳しい状況になるかも知れません。
実はこちらは、事業承継コンサルティングに限らず、通常のコンサルティングでも確認させて頂くものであり、この3つの視点は是非、後継者にも持ってもらいたい視点になります。
これまで、攻め・守り・財務のそれぞれの視点で、事業承継コンサルティングで感じたことをお伝えしてきました。
「攻め」の視点でお客様から選ばれる理由がしっかりしていれば、それをそのままの状態で後継者に引き継ぐことが重要です。事業継承によって、強みが薄れてしまわないようにするのです。
それについては、知的資産経営の考え方が役に立ちます。
当社はお客様からなぜ選ばれているのかを紐解きながら、その背景となっている強み(知的資産)を考えていきます。
この強みの掘り起こしを渡す人と受ける人がリレーのバトンパスのように共におこなうことで、共通の認識としていきます。
ただしこれはあくまで「選ばれる理由」というのが現状で明確な場合に限ります。
お客さまに「選ばれる理由」が残念ながら弱くなっている場合や従来の顧客層では売上や成長が頭打ちになっている場合には、事業継承を機にさらなる戦略が必要です。知的資産の掘り起こしだけでなく、強みをしっかりPRしたり、新たに選ばれる理由をつくったりすることが重要となる場合もあります。
事業承継における知的資産経営の活用の度合いも企業の状況で変わってくるのだと考えています。
事業承継コンサルティングにおける「視点後継者の得意・不得意・やる気」について解説していきます。
「自分は経営者に向いていない」とか、「自分はこの業界に向いていない」とおっしゃる後継者にお会いすることがたまにあります。
そういった後継者の方との会話の中で感じるキーワードとしては成功体験と覚悟です。
経営者としての成功体験と覚悟がまだ不十分なために、上のような発言があるのだと思います。
当然、後継者自身が好きなビジネスではないということもその背景にあるかも知れません。
しかし、こういった後継者だとしても、成功体験と覚悟を身につけることで、見違えるほど変わっていく姿を数多く見てきました。
研修や書籍などで得た知識・ノウハウと、現場での実践の試行錯誤を繰り返しながら成功体験を積み重ねていくのです。
コンサルティングにおいても後継者が成功体験を一つずつ積み上げていくためにどんなことが必要かを、共に考え、一緒に乗り越えていきます。
既存事業を精通するほか、次のようなことを行っていくことで成功体験を積み重ねていきます。
・新規開拓
・新規プロジェクト
・新規事業
・業務改善
後継者が1人で乗り越えられるケースもあれば、社員やコンサルタントなどと一緒に乗り越えていくケースなどさまざまです。
その成功体験が経営者としての覚悟になっていくと思うのです。
後継者の得意・不得意・やる気の続きです。
お会いする後継社長の中には非常に優れたビジネス感覚をお持ちで、事業拡大を積極的にされていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。
しかし、その一方でその優秀さが故に、社長を支える幹部が社長の期待に十分に応え切れていないという場面も見受けられます。
そのような中、人材育成に時間がかかることを承知で、その幹部の人材育成のためのコンサルティングをご依頼頂きます。
今回の事業承継の視点で挙げた「守り」を主体とした会社の仕組み作りや会社の事業を任せる事業責任者育成など、テーマはさまざまです。
社長1人の力だけでは企業を大きくすることはできないと痛感された経営者をお手伝いでしております。
その際に事業承継の視点だけでなく組織力強化の視点でも支援しております。
事業承継コンサルティングにおける、最後の視点、「渡す人と受ける人との人間関係」について解説していきます。
今まで、事業承継において、渡す人は父、受ける人は息子というのが一般的でしたが、 最近は、娘、妻、社員、もしくは別の会社の社長など事業承継のあり方は大きく変わっています。
ある意味、事業承継で一番難しい視点だと言えます。
というのも、渡す人、受ける人の人間関係次第で、事業承継のスケジュールはずいぶんと変わってくるものなのです。
渡す人が、「自分が〇〇歳になったら渡す」と宣言して、受ける人の意欲と能力が備わっており、渡す人と受ける人の関係に問題なければ、スムーズに事業承継ができます。実際、そういうケースも見て参りました。
しかし、一方で、それができない場合も当然、あります。
血縁関係であるが故、社長と社員という関係が故、さまざまなのです。
ここに焦点を当てた場合、コンサルタントとしてはノウハウを提供するよりも双方の意見を聞くことが重要だと思っております。
事業承継コンサルタントなのですが、一種カウンセリングのような役割を担うのです。
それを第三者的な立場とこれまでの経験から、翻訳して双方に伝えていく。
伝書鳩のような役目かも知れません。
渡す人受ける人にとってはその伝書鳩が必要な段階だと思っています。
そこで改善の糸口が見えてきたら、
1 攻め
2 守り
3 財務
4 後継者の得意・不得意・やる気
に取り組んでいく。
事業承継の地ならし的な取り組みなのです。
それが短期で終わることもあれば、長期間やり続けながら、攻め、守り、財務、後継者の得意・不得意・やる気を並行して取り組んでいくこともあります。
渡す人・受ける人の思いをつなげる重要な役目を時には外部の人が担うことが円滑な事業承継になることもあります。
創業から10年間、さまざまな経営者・後継者の事業承継を支援する中で、いろいろなことが見えてきました。
ここ数年、事業承継は旬なテーマになっており、株式などの財産承継が中心になっていますが、それ以外のお悩みでご相談を頂き、支援しているケースが多かったように振り返って感じました。
先日、一旦終了した、後継者を支える経営幹部育成コンサルティングでも先代の時代からの幹部の動き、社内の雰囲気がずいぶんと変わったと評価を頂きました。
財産承継だけが事業承継ではありません。
何度も書いていますが、
1 攻め
2 守り
3 財務
4 後継者の得意・不得意・やる気
5 渡す人と受ける人との人間関係
の視点で、どこから支援していくかの優先順位を決めていくことが事業承継コンサルティングの難しさであり、やりがいであると感じています。
その着眼した結果が事業承継計画であると思っています。
ただし、計画策定ありきでは、いわゆる絵に描いた餅になってしまいかねません。
当社において、事業承継計画はあくまで道具(ツール)なので、ご支援している会社が
道具が必要かどうかに合わせて臨機応変に対応していきます。
実は、事業承継計画という道具を使うよりももっと必要なことがある会社が大変多いのが事実です。
御社の承継においても
1 攻め
2 守り
3 財務
4 後継者の得意・不得意・やる気
5 渡す人と受ける人との人間関係
の視点で一度検討されるとスムーズな承継に近づくと思います。
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