「段取りよく仕事するように!と言われても、どうやったら段取り上手になれるの?」と言ったご相談を受けることがあります。これまで段取りは、上司や先輩の仕事の仕方を見て学ぶ・盗むものという考え方が強いものでした。
最近では、「段取り」の本が多く出版されていますが、そのような本を読んでも、自分の仕事とちょっと違うので、合わないということもあるかも知れません。
今回は、セミナー・研修、コンサルティングなどでお伝えしている、段取りが上手になるコツやポイントについてお伝えしたいと思います。
学生時代には、ほぼ使わない言葉、「段取り」
そもそも段取りはどのように生まれたのでしょうか?『段取りの“段”はどこの“段”? 住まいの語源楽』 (新潮新書)によれば、段取りの語源について、2つの考え方があるようです。
1つは、芝居に由来する「段取り」は、「段」が話の一区切りや一幕を表すことから、話の構成を指すようになったと言われます。
もう一つは、建築現場で使う「段取り」は、準備や計画、更には進行といった意味で使用されています。段取りの段は、石段の段。傾斜地に石段をつくる際に、坂の勾配に応じて石段を何段に積み上げるかという寸法取りを「段を取る」と読んだようです。
石段が完成し、その石段を昇り降りしやすいか、予算内に収まっているか?調達しやすい石材を使っているか?など工事そのものを評価するにあたり、「段取りがよい・段取りが悪い」と使われるようになりました。
その後、次第に「段取り」は工事そのものの手際よく手配することを示す言葉として意味が拡がり、さらに、ビジネス・仕事の場面へと広まったと言われています。「段取り八分、仕上げ二分」という言葉は、準備やプロセス(過程)がいかに大切かを示しています。
建築現場の段取りの語源を聞くと、少しイメージが膨らんだのではないでしょうか?この段取りの語源から、2つのポイントが見えてくると思います。
1つ目は、ゴール(目標)があるということ。この場合では、階段を作るというゴールが明確にあります。すべての仕事には、何らかのゴール(目標)すなわち、目指したい基準・合格レベルがあります。営業・製造・事務といった様々な現場でも、ゴールを持って仕事しています。
2つ目は、「段を取る」にちなんで、ゴールに向かって、仕事の手順を「分ける」ことを大切にしているということです。どんな仕事のゴールにおいても、いくつかの手順が組み合わさっています。段取りがよい方は、任された仕事における手順がしっかり具体化しています。ちなみにこの「分ける」ということは、手順だけでなく、報連相や報告書作成などでも重要なスキルです。
では、改めて仕事の段取りとは、どのようなものでしょうか?
当社では仕事の段取りとは
「最大の結果を、最短の時間で漏れなく・ミスなく・手戻りなく出す」
こととしています。
仕事においては、よりよい成果を出すことが求められますが、長い時間をかける訳にはいきません。特に働き方改革・人口減少の中で、働く全ての方の生産性向上が求められます。だからこそ、最短の時間でおこない、漏れなく・ミスなく・手戻りなく出すことが重要です。
一方で、段取りが悪い、段取り不足で悩んでいる方は、次のようなお悩みがあるのではないでしょうか?
このような事で仕事の段取りで悩んでいらっしゃる改めて、段取りの語源から見る段取りで大事なポイント2つを踏まえて、具体的に再確認しましょう。
どのような仕事にはゴール(目標)すなわち、目指したい基準・合格レベルがあります。仕事の段取りを考える上で、仕事のゴールを考えることが最も重要です。
このゴールは、実は仕事における5W1HのWhat(何を)の変形で、「何をどのレベルまで」という風に考えると分かりやすいです。
もっとシンプルに言えば
・お客さま、上司、周りの人が自分に求めていること
・お客さま、上司、周りに自分が伝えたいこと
と置き換えてもいいと思います。
例えば、「報告書を作成する」という仕事でも、それがどのレベルまで、例えば1ページなのか?3ページなのか?ゴールが異なれば、仕事の段取りも変わっていきます。
そのゴールを考える上で、Why(目的)やWhen(納期)なども重要です。何のためにその仕事を任されたのか?その仕事の納期はいつまでなのか?もゴールに沿って考えていくとHow(手段)が見えてきます。
手順を決めるとは、How(手段)を整理することに関係します。段取りで重要なポイントの1つ「分ける」とも関係します。段取りが苦手、段取り不足の方は、この「分ける」スキルが身に付いていないことがほとんどです。
例えば、企画提案書の作成を任された場合、どのような段取り(手順)で進めるか、「分けて」考えるのです。一例として、次のような手順を思い当たると思います。
もちろん一例ですので、正解・不正解はありませんが、段取りが上手な方は、ゴールから逆算して、どんな手順が必要かを考えて、行動することがあります。
「同じミスを何度も繰り返す人」「業務を終えるまでの時間が長すぎる」「スケジュール管理ができない」というケースの場合でも実は細かな手順に分けられておらず、大雑把に仕事進めようとすることがあります。そこで細かく「分ける」ということを意識すれば上記の様なことは少なくなります。
この「分ける」というものは、仕事の手順だけでなく、
などを整理したりする時にも重要な考え方です。
これまで、段取りの基本的な考え方についてお伝えしましたが、毎日の業務の中で段取りを改善したいという方もいらっしゃると思います。
「もっと段取りよく仕事して!」など上司からお小言を言われるときには、どうすればいいのでしょうか?それにはタイムスケジュールとTODOリストの作成がおすすめです。
タイムスケジュールとは1日のスケジュールです。1日どういう計画で1日を過ごそうとしているのか?漠然と考えている人も多いかも知れません。そうすると1日がダラダラとなってしまい、時間だけが過ぎていくことになります。
そこで、15分や30分単位で仕事の段取りを考えていくことをオススメします。出社して、まず何をするか、次に何をするか?大雑把に考えるのではなく、15分や30分単位で計画していくのです。
実はこれも「分ける」スキルが役に立ちます。1時間くらいで報告書作成できるだろうとせず、まず15分で構想を考えて、30分で作成して、残りの15分で印刷・誤字脱字のチェックという風に自分なりにゴールから逆算して、手順を分けていくのです。
大事なことは(1)ゴールを設定して、(2)手順に分け、(3)手順毎の目標時間を設定することで1日のタイムスケジュールをより密度の濃いものにしていくのです。
またタイムスケジュールではなく、TODOリストを書くのもオススメです。特にTODOリストにおいても、(1)おこなうべき作業項目出し(必要に応じて、作業を分ける) (2)それぞれの目標時間の設定、(3)優先順位の決定(分けた作業から何からすべきか決める)を毎日おこなっていくことが重要になります。
私は会社員時代、このTODOリストを毎日作り直していました。TODOリストを作り直すことで、何をすべきかを自ら認識し、そしてTODOリストを作成することで、仕事に対するモチベーションを上げていくルーティン作業にしていました。終わった項目を消すことも小さな達成感と小さな自信につながっていきます。
仕事の段取りの中には1日単位でなく、週間・月間・年間で仕事の段取りを考えていく必要のある方もいらっしゃると思います。そこでオススメなのがガントチャートです。
ガントチャートとは、システム開発や建築の現場でよく使われる工程表です。左側におこなうべき作業を記入して、右側にいつするのか、棒線を引いて、スケジュールを見えるようにしていきます。
時間軸は長いですが、段取りのポイントは、共通しており、(1)ゴールを決める、(2)手順を分ける、(3)手順毎の目標時間を決める、3つが基本になります。当社ではガントチャートを活用した経営計画づくりのご支援もおこなっています。
PDCAとはP(Plan:計画)D(Do:実行)C(Check:確認)A(Action:修正)の略です。段取りはP(Plan:計画)の段階の準備とD(Do:実行)に該当します。1日の作業や週間・月間・年間スケジュールでも、計画を立てて、実行し、適宜チェックしながら、今後の計画を調整していきます。
1日のスケジュールにおいても、全てが予定通りに進行するとは限りません。飛び込みで仕事が入ってきたり、思ったよりも時間がかかったりなど1日のスケジュール、すなわち段取りを見直すことがあります。適宜に状況をチェックしながら、その後のスケジュールを変更していくことが段取り上手と言われます。
このほか段取りが良くなるその他のコツや留意点をお伝えしたいと思います。
・分けるというと細かく分けるということが前提としてありますが、場面によっては、ある部分は細かく、別の部分は大雑把でもよいのです。段取りとは、「最大の結果を、最短の時間で漏れなく・ミスなく・手戻りなく出す」ものであり、最短の時間ということに着目すれば、すべてを細かくする必要もないのです。
・段取りが上手な方は、自分がすべき事を仕組みにしています。例えばチェックリストなどです。毎日行う作業のチェックリスト(ルーティンリスト)などがあれば、いちいち思い出さなくても、そのチェックリストを見れば、漏れなく作業をすることができます。
・目標時間の設定と余裕をつくることもあります。段取り上手になるには、スケジュールをパンパンに埋めるということを考える方もいらっしゃるかも知れません。しかし、スケジュールを詰め込みすぎると、突発的な事態に対応することはできません。そこで、作業時間に少し余裕を持たせたり、1日などの全体の中で余裕時間を適宜設けておくことも重要です。
以上、段取りについて、お伝えして参りました。
段取りとは、「最大の結果を、最短の時間で漏れなく・ミスなく・手戻りなく出す」であり、そのための2つのコツがゴール設定と、ゴールから逆算して「分ける」がポイントでした。その「分ける」に関連した書籍をご案内します。
大企業・中小企業・行政関係者など業界・職種問わず1000人以上のビジネスパーソンと面談して、見えてきた仕事がデキる人のコツ。「分ける」たったこれだけで、周りの評価が一変します。
フォレスト出版より出版しています(2022年1月13日)。
https://www.amazon.co.jp/dp/4866801476/
・いつも仕事が時間通りに終わらないので残業や休日出勤が多い
・うっかりミスや見落とし、やり直し、上司からのダメ出しが多い
・仕事の段取りを組んだり、計画を立てるのが苦手
・上司や取引先から「何を言いたいのかわからない」とよく言われる
・トラブルが起きると頭の中が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなる
など、 本書はこのような仕事の「できない」をなんとか解消したいと日頃からお悩みの若手ビジネスパーソンの皆さま、そしてそうした部下をお持ちの管理職の皆さまへの処方箋です。
仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。
働き方改革などで上司・部下の労働時間も以前よりも減っている現実。以前は量(時間)をこなして、質(品質)を追求できた時代から、量を減らしながら、質を追求する時代になっていきます。しかし、上司が教える時間・部下が働く時間も減っている中で、部下が育たないから結局、管理職が仕事を抱えるという実情をお伺いすることもあります。
当社では、この分ける(分割・分解する)に着目した研修(講師派遣型)をおこなっています。上司の教え方にバラツキがある、若手社員がなかなか育たないという企業に向けた、上司と部下が共に学ぶ教え方・学び型研修です。働き方改革・生産性向上の取り組みにも通じる研修です。日常業務で必要な「段取り」と「報連相」を中心に学んでいきます。
ご関心がある方は、以下より詳細をご確認ください。
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フォレスト出版より2022年1月13日に発売します。
https://www.amazon.co.jp/dp/4866801476/
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・うっかりミスや見落とし、やり直し、上司からのダメ出しが多い
・仕事の段取りを組んだり、計画を立てるのが苦手
・上司や取引先から「何を言いたいのかわからない」とよく言われる
・トラブルが起きると頭の中が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなる
など、 本書はこのような仕事の「できない」をなんとか解消したいと日頃からお悩みの若手ビジネスパーソンの皆さま、そしてそうした部下をお持ちの管理職の皆さまへの処方箋です。
仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。