「競合が価格を下げたので、こちらも下げようか考えている」
「経営戦略を練りたいが、行き詰まっている」
とお悩みの中小企業の経営者のご相談を頂くことがあります。
大企業であれば、価格を下げてサービスを提供するのも良いかもしれません。しかし、規模がそこまで大きくない企業では、そうした価格競争に巻き込まれると、売上が下がってしまう可能性があります。
こういった状況に陥らないためにも、知っておいていただきたいのが「知的資産経営」の考え方です。
知的資産経営により、自社の強みを生かして、お客さまに選ばれる経営をすることが可能になり、売上アップが見込めます。
「知的資産経営」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?
聞き慣れない言葉なので、
「知的財産とは違うの?」
「商標登録のこと?」
と疑問に思う方も多いかもしれません。
知的資産は、簡単に言うと「目に見えない資産」のことです。
たとえば、
・人材
・技術
・経営理念
・人脈
などが挙げられます。
知的資産の種類はバラエティ豊富です。
そのため企業によっては、「え!これも知的資産に入るの?」と思うものもあるでしょう。
なお、
・特許
・ロゴなどのデザイン
・ネーミング
といった「知的財産」も知的資産の一つとして考えられています。
知的資産経営とは、こうした目に見えない資産(=強み)を生かして経営をおこなうことを指します。
扱っている商品やサービスが競合と似ている、ということは多いかもしれません。
しかし、
・経営に対する理念
・企業の歴史
・お客様の属性(性別、年代、住所など)
が競合他社と全て合致することは珍しいでしょう。
そのため、知的資産の違いを前面に打ち出した経営をすると、自然と他社との独自性が明確になるため、「差別化」ができるのです。
差別化ができていると、「他社よりも安く」といった価格競争に巻き込まれにくくなります。
また、自社のブランドが確立されるため、お客様だけでなく、社員からも愛着を持ってもらえる企業になることが見込めるのです。
知的資産経営の一番のメリットは、「お客さまから他社ではなく自社を選んでもらえる理由」を見出す・創ることに他なりません。
先ほど、知的資産経営をすることで差別化が図れ、お客さまに選ばれるようになると述べました。
これだけに限らず、知的資産経営には他にも以下のメリットが挙げられます。
1. 独自性を出せる(お客さまに選ばれる理由)
2. 経営理念が明らかになる
3. 従業員のモチベーションアップに繋がる
1. 独自性を出せる(お客さまに選ばれる理由)
知的資産経営の2つ目のメリットは、先ほども書いた「独自性を出せる」点です。
これは、他社ではなく自社がお客様から選ばれる理由を見出すことと同じです。
知的資産を見つけるワークをした結果、新たな独自性を見出すこともできるかもしれません。
たとえば、今までは30-40代の働き盛りのビジネスパーソンをターゲットにしていたけれども、新しい独自性を踏まえると、20代の女性向けに商品を展開できるかも、といったこともあるでしょう。
ターゲットを変えて成功した事例としては、「吹き戻し」のメーカー企業の例が挙げられます。
吹き戻しとは、息を吹き込むと、ストローのような形状に取り付けられた紙が音とともに伸びるオモチャです。
駄菓子屋や祭りの屋台で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
2018年には、このメーカーは最盛期よりも生産量が50分の1に下がったそうです。
しかし、ターゲットを子供から20代の女性に切り替え、エクササイズや健康目的での吹き戻しを制作し、販売を始めました。その結果、ヒット商品となり、年商が回復しつつあるのです。
2. 経営理念が明らかになる
知的資産経営により、今後どのように経営を進めていくかも明確になりやすいです。
なぜなら、知的資産を洗い出すワークをすることにより、経営理念が明確になるからです。
「あ、これも良さそう」
「この人たちもターゲットにしよう」
と、規模を大きく事業を展開したところ、器用貧乏になってしまう企業もあります。
一方で、企業の経営理念が明確になっていると、軸があるため、「ここぞ!」という箇所にのみ集中することができます。
また、知的資産を見つけて、経営理念を確立することによって、経営判断も以前よりも速やかにおこなうことができるようになるでしょう。
3. 従業員のモチベーションアップに繋がる
知的資産経営を始める前には、自社の知的資産を明らかにする必要があります。
その過程では、お客様だけでなく従業員にもヒアリングをおこない、
・自社への思い
・商品やサービスへの感想
・自社の良いところ
を挙げてもらいます。
こうすることによって、自社への愛着を他の社員と共有できます。
その結果、よりいっそう企業への愛着が高まり、仕事へのモチベーションもアップするでしょう。
中には勤務形態や商品について、社員から耳が痛くなるような意見が出てくるかもしれません。
しかし、企業を良くするためにも、それらをきちんと受け止めましょう。
そうして改善をすることによって、より良い企業になっていくのです。
離職率の高さに悩んでいる経営者は、知的資産を見つけるワークを社内で実施してみるのも良いかもしれません。
「知的資産経営をしてみたいけど、どうやって自社の知的資産を見つけたらいいの?」
とお思いの方もいるでしょう。
そこで、ここでは、知的資産の見つけ方をご紹介します。
自社の知的資産は主に、以下の項目を聞き取り、掘り下げて見つけていくのです。
1. 業務フロー (業務の流れやお金の流れなど)
2. 沿革 (企業の理念や歴史など)
3. お客様の評価 (お客様の声やクレームなど)
これらの聞き取りは、経営陣だけでなく、社内全体でおこなうと、より効果的です。
そうすることによって、先ほども書いたように、従業員のモチベーションアップにも繋がるでしょう。
このような聞き取りに関しては、KJ法やブレーンストーミングなどの手法を導入すると、意見が出やすくなるのでオススメです。
聞き取りをおこなったあとは、回答から知的資産を拾い上げ、
・人
・仕組み
・外部との関係
に3分類で表にしておくと、経営戦略を考える際にもわかりやすくなります。
今回は、知的資産経営のメリットと、知的資産の見つけ方をご紹介しました。
自社の強みが明らかになると、自信にも繋がります。
また、企業理念が明確になったことにより、経営判断もスピードを増すでしょう。
その結果、事業展開にプラスにはたらくことが見込めます。
具体的にどのように知的資産経営を行うかについては、以下のコラムでご紹介しています。
大企業・中小企業・行政関係者など業界・職種問わず1000人以上のビジネスパーソンと面談して、見えてきた仕事がデキる人のコツ。「分ける」たったこれだけで、周りの評価が一変します。
フォレスト出版より2022年1月13日に発売します。
https://www.amazon.co.jp/dp/4866801476/
・いつも仕事が時間通りに終わらないので残業や休日出勤が多い
・うっかりミスや見落とし、やり直し、上司からのダメ出しが多い
・仕事の段取りを組んだり、計画を立てるのが苦手
・上司や取引先から「何を言いたいのかわからない」とよく言われる
・トラブルが起きると頭の中が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなる
など、 本書はこのような仕事の「できない」をなんとか解消したいと日頃からお悩みの若手ビジネスパーソンの皆さま、そしてそうした部下をお持ちの管理職の皆さまへの処方箋です。
仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。