代表者である吉田 英憲と、そのほかさまざまな得意分野をもつ中小企業診断士・経営コンサルタント(広島県在住)が、専門知識と経験から得た「役に立つ」情報をまとめたフリー情報紙(企業支援者向け)です。
<12月号の記事>オススメ本のご紹介
書名:経営戦略論入門
著者:波頭 亮
出版社:PHP研究所
今回は、前月にご紹介した、知的資産経営とも関連する書籍を紹介します。本書は、新書で200ページというページ数であるものの、非常に内容が濃い書籍です。
本書は二部構成となっており、第一部は、「経営戦略論の系譜と分類」、第二部は、「現代の経営テーマ」となっています。個人的には第一部の「経営戦略論の系譜と分類」は、知的資産経営の存在意義そのものを問いただす意味で有益でした。
具体的には、第一部の前半では、みなさまご存じのSWOT分析やコアコンピタンスといった分析手法や考え方の解説だけでなく、どういう時代背景により誕生したかといったことを、時系列でまとめてあります。また、第一部の後半では、様々なある戦略論を「方法論の軸」「戦略のタイプ」による分類がなされており、分かりやすく整理されています。今までの経営戦略に関する書籍では、見られない時系列に沿ったまとめや分類は一読の価値があろうかと思います。読書の時間がなかなか取れない方や経営戦略の基本を学びたい方にとっては最適な一冊かと思います。年末年始の読書の一冊に加えてみてはいかがでしょうか?
<11月号の記事>
今月、ある金融機関にて、知的資産経営の説明を行いました。その説明にあたって、これまでの経営理論・手法と違って、何が違うのかといった点をより自分なりに整理してお伝えしました。
知的資産経営とは、企業が気づいていない強み、強みの源泉などを明らかにし、その強み、その源泉を経営に活かすことです。すでにお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、その視点は内部環境分析に基づいています。内部環境分析では、SWOT分析の強み・弱み分析、VRIO分析、コアコンピタンス分析、バリューチェーン分析など既に多くの手法があります。では、これらの分析手法とは、今回の知的資産経営の分析手法とは何が異なるのでしょうか?
私の中の整理は以下の通りです。
(1)内部環境分析という枠組みは超えず、画期的な目新しさはない
(2)しかし、従来の分析手法と比べて、より具体的な分析手法であり、かつ多面的な視点での分析であり、有効性が高い
(3)自社から見た強みではなく、顧客から見た強みにフォーカスしている。
(4)BSCの戦略マップと似た、強みのつながりを可視化するツールを用いているため、従業員や第三者にも分かりやすい
(1)については、知的資産経営というと、特許などの技術戦略といったイメージを思い浮かべる方がいらっしゃるかも知れません。しかし、あくまで内部環境分析をベースとした考え方です。VRIO分析の考案者である、オハイオ州立大学の経営大学院教授、バーニー(J.B.Barney)によって展開された、企業が競争優位を保てるかどうかは、企業の経営資源次第であるといった考え方に沿っています。
(2)については、従来の分析手法は、視点の提示に留まるものが多く、分析手法という点においては、具体性に欠けるものがありました。知的資産経営では、既存のフレームワーク(バリューチェーンなど)を応用しつつ、また複数のツールによって、知的資産の導出を行います。ただし、他のツールといっても、残念ながら目新しい物はなく、既存のものを応用している点がポイントです。例えば、沿革を掘り起こしながら、知的資産を導出する手法があるものの、ヒストリー分析の応用例とも言えます。
(3)については、SWOT分析をおこなうと、ありがちなのがお客にとってメリットや喜びにつながってない強みが列挙される場合があります。例えば、「若い社員が多い」などを強みに挙げることがありますが、それが顧客にとっての価値につながらなければ、強みとは言いにくいところもあります。知的資産経営では、顧客の視点というのを意識しながら隠れた強み、強みの源泉を抽出します。
(4)については、「見える化」を意識して、可視化ツールを活用しています。ただし、(2)でお伝えしたとおり、既存のツールの活用となっております。
このように知的資産経営では、既存ツールを使いながらも、これまで導出がしにくかった、隠れた強みや強みの源泉を知ることができます。では、それを知るメリットはどのようなところにあるのでしょうか? ひとつには、経営者や社員の自社の強みやその源泉に対する深い理解とそれによる、気持ちの拠り所・自信・信念につながるのだと思います。それらをまとめて、自社の軸といってもいいかもしません。この軸があれば、日々の行動や判断にブレがなくなってくるのだと思います。
様々な経営者とお会いしますが、やはり立派な経営をされていらっしゃる方とお会いするとその発言・行動にブレや迷いが少ないことを感じます。おそらく何らかの軸をしっかりとお持ちだと思います。
今回、ご紹介した知的資産経営というのは、「自社は何が強いのか?得意なのか?」「なぜそうなのか?」といった自社の軸を探す旅のように感じます。しかし、その旅は終わりません。なぜなら、過去を振り返る内省・内観の旅だからです。その旅で得た軸を十分に認識して、将来に向けた旅として企業経営をおこなっていく必要があります。その軸をベース、既存事業を展開していくのか、新規事業をしていくのかといったひとつのヒントとなるでしょう。
<10月号の記事>
ここ1年、複数の企業にて経営幹部の育成支援をおこなっております。中小企業では、OJTにて人材育成を行うことが一般的かと思います。その一方で、会社をたくましく、大きくしていくためには、社長自身だけの力では限界があり、経営幹部が成長する必要があると認識された経営者から、経営幹部の育成支援の依頼を受けております。
育成内容については、個別指導型であり、その方にあったメニューを考案しております。以前、ご紹介したハーマンモデルを活用して、自身の意識にのぼらない部分を意図的に引き上げるメニューの提供などをおこなっております。
社長から経営幹部に対する要望として「自分の意見を出して欲しい」「質問に対する答えを出して欲しい」などを頂きます。当たり前のようですが、経営幹部の水準となれば、なかなか難しいようです。
先日、幹部研修をおこなっている支援先の経営会議に出席したときに、経営幹部が積極的に発言しているシーンを見ることができました。会議に慣れてきたという面もあるものの、今どのような議論が行われており、自分が何を発言する必要があるかをご自身で認識されておられたようでした。また自分自身が議論をずらしてしまった場合でも、そのことを認識され自ら軌道修正されていらっしゃいました。このような状況を心理学で「メタ認知」(自分自身をまるで外から見ているように客観視できる能力)というそうです。今まで、自分の思いをダイレクトに伝えていた方が、議論がかみ合うように調整できるレベルになってきたかと思います。
参加者一堂がこのような意識なれば、会議での議論も的が絞れ、充実したものになってきます。今話すべき事、そうではないことの整理ができ、話すべき事に集中する密度の高い議論となります。このようなシーンを見て、改めて「企業は人なり」というのを実感するとともに、引き続き支援内容のレベルアップを図っていきたいと考えています。
<9月号の記事>
現在、いくつかの企業にて事業計画策定の支援をおこなっております。事業計画と聞くと、戦略策定や数値計画が中心とお考えの方もいらっしゃると思います。今回の支援については企業の意向から、行動計画(アクションプラン)を中心とした支援をおこなっております。多くの企業で耳にするのは、事業計画を立てたものの、見返してみるとその内容が具体的でないために、例えば、何を目的におこなうのか、誰が行うのか、どのようにおこなうのかが明確でなく、当初の想定通りの行動を実行できなかったとの声をよく聞きます。
一般的には行動計画は「5W2H」を盛り込べきとの視点があります。「5W2H」とは、ご存じの通り、(1)誰が(Who)、(2)なぜ、どのような目的で(Why)、(3)何を(What)、(4)いつ(When)、(5)どこで(Where)、(6)どのように(How)、(7)いくらの予算で(How much)の各要素を盛り込んでいきます。このような視点で行動計画も策定することは大変重要です。
しかしながら、行動計画の内容によっては、「5W2H」だけでは、行動計画の要素として十分でないこともあります。例えば、その行動計画において、得たい成果を明確にしておかなければ、メンバーとのゴールの共有ができずに、行動計画が中途半端に終わってしまう場合もあります。
このように、今回の支援においては「5W2H」に加えて、様々な視点から行動計画をより具体的にしていくような支援をしております。作成時点だけでなく、実行後の進捗確認する際でも、どのような内容だったかを明確に想起できる内容となるように支援をしていきたいと思います。
<8月号の記事>
最近、数十年前に創業した経営者数名からお話をお伺いする機会がありました。創業当時どのような思いで創業したのか、そして会社がどのように成長していったのか、などについて会社の歴史をインタビューしました。その中で特に驚きを感じたのは、多くの経営者は創業当初、明確な「経営理念」や「ビジョン」といったものが存在していないということでした。例えば、「○○にあこがれて」「(営業や開発や工事といった)業務そのものが得意だったから」「お金儲けできそうだったから」といった自分起点の創業であり、自分や自社が顧客や社会とどのように関わりたいかについてはあまり多くを伺うことができませんでした。
一方で、企業経営に関する本では、「経営理念」や「ビジョン」が重要であり、それを起点に事業領域や戦略を決定するといった流れが記載されています。この現実と理論の乖離は一体どこにあるのでしょうか?
経営者のインタビューを進めていくと、創業以降にある共通点が見出されました。それは、あるタイミングにおいて経営者が自社を自分起点で見るだけでなく、他者起点で見始めたということです。他者とは「顧客」「社員」「社会」を意味します。「当社が顧客からどういう存在でありたいか」「当社は社員で成り立っており、会社は社員の生活を守っていく責任がある」「当社は社会からどう見られているのか」など、創業者が、あるタイミングにおいて他者起点で会社を「強烈に」認識し始めたように感じました。車の運転で例えると、ちょうどシフトチェンジしているようなイメージです。
このようなことを考えていると、パナソニック株式会社の創業者の松下幸之助氏の「企業は社会の公器である」というフレーズがふと私の頭に思い浮かびました。「企業は社会の公器である」の私なりの解釈は、「会社は顧客・社員・社会の信用と期待の土台に成り立っており、経営者や株主だけのものでなく、広く言えば社会のものである」です。今回インタビューした経営者は、あるタイミングにおいて上記を実感する出来事に遭遇し「自社は、顧客・社員・社会にとってどういう存在なのか」という使命感を考え始めたようでした。そこで、会社の方針やスタンスを内外に示し、会社を一つのまとまりとするために、「経営理念」や「ビジョン」の必要性や重要性を感じ、「経営理念」や「ビジョン」を策定するようになったのではないかと思います(文章化するかは別ですが・・・)。まさに自分視点から他者視点へのシフトかと思います。インタビューした経営者からは、創業当時には考えに及ばなかった、他者視点も盛り込んだ「経営理念」や「ビジョン」をお伺し、今なお大切にさせていらっしゃるように感じました。
創業者に限らず経営者が経営理念やビジョンを考えることは重要だと思います。しかし、その答えが、自分起点しかない状態で考えた答えならば、おそらく一時的な経営理念やビジョンなのかもしれません。どこかのタイミングでシフトチェンジし、「企業は社会の公器である」のような腹落ち感から生まれたものこそが、真の経営理念やビジョンのように感じます。
私自身、独立して6年目に入りますが、今回のインタビューを通じて、気持ちを新たにすることができました。
<7月号の記事>
7月より、後継者や経営幹部候補に対して、マンツーマンの育成のご支援をしております。後継者や経営幹部候補に対して多くの経営者は「幅広い視点で物事を考えて欲しい」「深掘りした思考をして欲しい」「新しいテーマ・プロジェクトに対して自ら率先して取り組んで欲しい」などの期待を抱いています。しかしながら、現状は、「新プロジェクトを任せたのに、全く進んでいない」といった残念なお話をよくお伺いします。
この理想と現実のギャップの背景として、経営者と、後継者・幹部候補を比べると、視点や思考の違い、情報量・知識の差などがあるように感じます。多くの経営者は自ら事業を立ち上げ、様々な苦難を乗り越えて事業展開してきました。一方で、後継者や幹部候補の中には、これまで経営者から言われたことだけを業務と捉え、自ら何かを実行し、生み出すということの経験が十分ではないようです。
経営者の特徴の一つとして、視座が高く全体観を持っています。その背景として、経営者は様々な社内外の方との接触することで、多方面の事柄を考えざるを得ず、全体観を結果的に持つようになったと推察しております。
当然、十分な経験を積み重ねれば、全体観を身に付けることができるかも知れませんが、経営者の多くは、後継者や幹部候補にできるだけ短時間で全体観を持ってもらいたいと考えており、今回のご支援を通じて、その実現ができたらと思っております。
<6月号の記事>
今月、知的資産経営のセミナーの講師を担当しました。セミナー冒頭に、受講者の方に孫子の兵法の「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という一節をお伝えしました。この意味は、「敵と味方の情勢をよく知って戦えば、何度戦っても敗れることはない」(大辞泉)です。
企業経営では、敵(競合)だけでなく、お客さまのことを知る必要があることは言うまでもありません。とりわけ、今回の知的資産経営セミナーでは、改めて自社のことを見つめ直す機会として捉えて欲しいとのメッセージをお伝えしました。
自社分析と言えば、SWOT分析などで自社の強みを箇条書きに列挙するということはよく見られます。この知的資産経営では、お客さまに評価されている強みはどのようなもので、それが実現できているのはどういう理由・背景があるかという強みの源泉まで掘り起こしていきます。更に、自社の複数の強みがどのようにつながっているかを示す価値ストーリーという図を作成していきます。このようなステップを踏むことで、一般的な列挙に比べて、深掘りした強みの源泉を知ることができます。
ある会社でも強みの源泉を知ったことで後継者が誤った経営判断を回避することができました。今回のセミナーにおいても、受講者の方が自社の強みの源泉を知り、今後の企業戦略に活かしてもらえたらと思います。
<5月号の記事(1)>
前号にて、組織文化の見直しの取り組みをお伝えしました。今回はその続編です。現在、継続的に訪問している企業にて、自社が以前から大切にしている思いが最近採用したスタッフに伝わっておらず、大変残念であるといったことをお伺いしました。
この原因として、企業が大切にしている思いの浸透が行われていないことが考えられます。その思いとは、経営者・経営幹部が大切にしている思い(創業時~現在まで)などが挙げられ、その思いが、端的に表現されていわゆる「口ぐせ」になることもあります。
例えば「お客さまに感動を」と思いを伝えても、人によって認識の違いはあります。その目線あわせのため、その思いの背景となったエピソードによる具体化が必要です。
どんな会社を訪問しても、その会社における、過去の良い(時として悪い)エピソードが残っているものです。しかし、それはあくまで、そのエピソードが生まれた時に居合わせた経営陣・スタッフが理解しているだけで、そのエピソードが生まれた後に入社したスタッフは当然ながら体感できません。そのため、伝えようと努力しなければ、一部のスタッフには、理解されません。このエピソードの共有こそが、組織が大切にしている思いを共有することになります。
冒頭で述べた企業では、さまざまな視点からエピソードを集めて、スタッフとして大切にすべきことをまとめていく支援に入ります。こういった積み重ねが、よい組織文化を継続・発展させることにつながるのだと思います。
<5月号の記事(2)>オススメ本のご紹介
『トヨタの口ぐせ』
(株)OJTソリューションズ編著
出版社:(株)中計出版
上記のコーナーで、経営者・経営幹部が大切にしている思いの背景となったエピソードの共有の重要性を伝えました。その一方で、経営者・経営幹部が大切にしている思いは、「口ぐせ」という形で経営者・経営幹部に刷り込まれ、そして発言され、スタッフにも刷り込まれている場合があります。
本書は、トヨタ勤続40年以上の元現場リーダーたちを取材し、「トヨタで口ぐせのように語り継がれている言葉」をまとめ、その言葉の背後にある考え方に迫ろうとしています。 こうした「口ぐせ」の中に自分たちの会社はどうあるべきか、自分たちの会社の人間はどうあるべきか、という想いが凝縮されていることが多いと本書は述べています。本書では、口ぐせが生まれた背景やエピソードなどがまとめられており、一読して分かりにくい口ぐせでも、その内容を容易に理解することができます。その一部をご紹介しましょう。
「カイゼンは功遅よりも拙速」
トヨタのカイゼンについては、皆さんもご承知の通りだと思います。そのカイゼンの進め方については、功遅(考え方はいいが時間がかかる)よりも拙速(出来栄えはいまひとつだが、とにかく速い)をトヨタでは求めています。カイゼンに向けてとにかく、まず動いてみる。そして走りながら考えをまとめていくというイメージです。
現場から生まれたこの言葉は、トヨタの元社長のインタビューでも使用されているほど、トヨタでは一般用語となっていることが伺えます。
上記の口ぐせ含めて31の口ぐせが解説とともにまとまれており、製造業に関わりがない方でも非常に読みやすく、示唆に富む内容だと思います。
<4月号の記事>
現在、複数の支援先にて、組織文化を見つめ直す支援をおこなっております。最近は雇用の流動化の影響により、多くの企業において、中途入社の方が入社されるようになりました。当然ながら、中途入社の方は、前職において仕事に対する考え方、行動のあり方などを刷り込まれており、転職先のそれらとは食い違う場合も見受けられます。その結果、中途入社の方に考え方がうまく伝わっておらず、コミュニケーションミスが発生したり、また経営者が想定していなかった組織文化になってしまったりすることもあります。また事業承継のタイミングにおいても、時代の変化に合わせて、後継者が期待する社員像が従前の社員像と合致しなくなることもあります。
ある支援先においては、当社が大切にしているものや、こうなってもらいたい社員像を社長だけでなく、幹部クラスにも考えてもらいながら、「ありたい社員像」を具体化の支援をおこなっています。成果物としては、活字化されたものなります。一般的には、行動指針やクレドと呼ばれるものに近いかも知れません。それらは作成しただけでは、全社員へ浸透せず、単なるスローガンで終わってしまう可能性もあります。作成より重要なことは、その活字化されたものをどのように社員に落とし込むかです。「ありたい社員像」になるために、各社員がどのように行動していくのかを考え、それに向かって行動してはじめて、各社員に「ありたい社員像」が刷り込まれたことになります。その積み重ねが組織文化を作っていくと思います。この刷り込みが上手な企業ほど、強い組織を作るのだと思います。
もちろん、この取り組みは、紋切り型の社員を作るのでなく、個々の社員の個性を活かしながら、大切にしているものは共通している、そのような組織文化醸成の支援を目指しています。今年度はこのテーマを、私自身の重要テーマとして取り組んでいきたいと思います。
<3月号の記事>
先日、とある企業にて思考スタイル診断をおこないました。この診断がモラルサーベイと異なる点として挙げられるのは、モラルサーベイでは、組織における従業員の意識(方針の理解、コミュニケーション、処遇への満足など)を調査する目的としているのに対して、今回の診断では、従業員の方が仕事において、どのような部分に意識が向き、また動機づけられ、また意識にのぼらない部分がどこにあるのかを調査するものです。コンピューターでの診断をおこない、その調査結果をもとにフィードバックをおこないました。
今回ご支援した企業では、従業員だけでなく社長にも参加頂きました。一番特徴的だったのが、組織として新しいことに対してコンセプトを固めてから行動するよりも、まず実行するという思考スタイルの方がほとんどでした。ヒアリングをおこなうと、これまでアクションが中途半端に終わったり、アイデアを出すだけで終わったりすることがほとんどということでした。今回は、組織全体へのアドバイスをおこなうと共に、社長が考えていた社員への期待像を把握しつつ、今後の行動変容のアドバイスをおこないました。
支援の途中ではありますが、先日、社長とお話ししたところ、社員達が自らの思考スタイルを共有化することで社内での風通しがずいぶんとよくなったようであるとのお話を頂きました。今回の企業に限らず、組織における自己理解と他者理解は、毎日同じ環境で働きながらも、なかなか進んでない企業は多くあります。しかし、ちょっとしたきっかけで組織が変わっていくため、今後もこのような支援を続けていきたいと思います。
<2月号の記事(1)>
先日、とある経営者から次のような質問を受けました。「経営戦略について、いろいろと勉強しました。一応の理解をしたものの、抽象的すぎてやや腑に落ちません。経営戦略というのをどう考えればいいのでしょうか?」
私自身、これまでさまざまな経営戦略論に触れており、学者や経営コンサルタントなどが各々、多種多様な定義をしていると感じています。例えば、経営戦略とは「現状とありたい姿のギャップを埋めるもの」といった定義があります。また、知的資産経営のアプローチの一つとして「強みを把握して、強みをベースに検討した将来に向けた成功のシナリオ」といった定義もあろうかと思います。
このように経営戦略には、様々な考え方・見方があります。とある経営者から頂いた質問をきっかけに私自身、経営者のより深い納得を頂けるような経営戦略の定義を、自分なりについて考えるようになりました。書籍から得られた知識だけでなく、様々な経営者と接して感じた経験から検討してきました。
まだまだ完成形ではないのですが、現時点の私の見解として、経営戦略とは、「(自社の将来像に向かって、)経営者および従業員の方の日々の意識の向け方、時間の使い方、資金の使い方などといった自社が持つ有形・無形の資源の配分」と考えるようになりました。例えば、新規事業を自社の重要な経営戦略と位置づける企業の場合、経営者の意識の向け方や資金などの多くの割合を、新規事業が占めることになるでしょう。一方で、経営者は既存事業については、やや意識が向かなくなるかも知れません。時間・資金は限られていますので、すべてに同じレベルで配分することは至難の業だと思います。中途半端な資源配分の場合、新規事業の成功は時間がかかるかも知れません。上記の例のように、自社の資源を重点的に配分することこそが戦略と言えるのではないでしょうか?
自社の将来像が明確あれば、より資源配分をおこないやすくなる一方で、まだまだ将来像は見えずに、目の前の事柄を必死に向き合っている経営者もいらっしゃいます。この場合でも、目の前の事柄に対して、何らかの資源配分はおこなっており(成り行き的な経営になっている場合もありますが・・・)、結果として経営戦略は存在していると思います。
では、将来像や資源配分をどのようにしていけばいいのでしょうか? その視点として、著名な学者・経営コンサルタントが提唱した経営戦略論にあるような「自社の強みに根ざす」「他社と差別化を図る」「競争相手がいないところを探す」などがヒントになろうかと思います。みなさんがお付き合いされている企業の戦略(資源配分)はいかがでしょうか?明確な意図をもって、資源配分をおこなっているでしょうか?
<2月号の記事(2)>オススメ本のご紹介
書名:戦略立案シナリオ
著者:佐藤 義典
出版社:かんき出版
今回は、上のコーナーでご紹介した、経営戦略に関する本をご紹介します。著者は、以前、別の書籍をご紹介した、経営コンサルタントの佐藤義典氏です。
本書では、上記で掲げた様々な著名な経営戦略論を、(1)「戦場型」(2)「独自資源型」(3)「差別化型」(4)「顧客型」(5)「メッセージ型」の5つに分けております。
それらの経営戦略論を踏まえて、著者オリジナルの「戦略BASiCS」を展開しております。これから経営戦略を勉強される方にとって、経営戦略論の基本を理解でき、また佐藤義典氏の新たな視点に刺激を受けることが出来る良書です。経営戦略本で、どれから手にとっていいのか分からない方にはオススメの一冊です。
<1月号の記事>
現在、複数の企業において、組織体制の見直しのご支援をしております。中小企業においては、組織図がない企業も時折見受けられ、仮に組織図があったとしても、どの役職にどんな業務内容を期待するのかが明らかになっていないことが多々あります。現在、支援中の会社でも、同様の状態でした。
今回の支援においては、役職者の方に、まず自分が実際行っている業務を棚卸ししてもらいました。役職者全員の業務を俯瞰すると、この業務はその役職(例えば部長)の方が行うべきではなく、他の方(例えば課長)が行うほうが会社全体としてメリットが大きいといったことが散見されました。このように担当業務の組み替えをおこなうことになった理由・背景は様々だと思います。例えば、たまたまAさんがその業務をやっていて、そのまま部長職になっても、その業務をやっていたなどが成り行き的なケースなどが挙げられます。
このように、どの役職が何をすべきかを経営者層と従業員でディスカッションをしていくことで、それぞれに役職に期待される内容が全員に可視化されることになります。
このディスカッションを通じて、別の効果もあります。当社にとって、行ったほうがよい業務を分かっていながら、担当が決められていないのでそのままになっていた業務が明らかになったり、ディスカッションを通じて必要な業務を発見したりすることができます。
会社のことを経営者と従業員が一緒になって考えていく、言わば「場づくり」が外部支援者に求められる役割の一つとして痛感しております。本年はこの「場づくり」に特に注力していきたいと考えております。
大企業・中小企業・行政関係者など業界・職種問わず1000人以上のビジネスパーソンと面談して、見えてきた仕事がデキる人のコツ。「分ける」たったこれだけで、周りの評価が一変します。
フォレスト出版より2022年1月13日に発売します。
https://www.amazon.co.jp/dp/4866801476/
・いつも仕事が時間通りに終わらないので残業や休日出勤が多い
・うっかりミスや見落とし、やり直し、上司からのダメ出しが多い
・仕事の段取りを組んだり、計画を立てるのが苦手
・上司や取引先から「何を言いたいのかわからない」とよく言われる
・トラブルが起きると頭の中が真っ白になってどうしたらいいのかわからなくなる
など、 本書はこのような仕事の「できない」をなんとか解消したいと日頃からお悩みの若手ビジネスパーソンの皆さま、そしてそうした部下をお持ちの管理職の皆さまへの処方箋です。
仕事の成果は、頭の良し悪し、センス、才能ではなく、「分ける」かどうかで決まるのです。